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雲を掴むような人物が雲を掴むような生活を淡々と過ごす、雲を掴むような話。
「幸福な遊戯」他、「無愁天使」「銭湯」の3編収録。 表題作である「幸福な遊戯」は男2・女1の3人の同居生活。 だいたい想像のつくような設定でそれでもキリキリとしたせつなさを残すのは、それを切り取るときにスキャンダラスな部分はアッサリと捨てて地味な心象風景を粘り強く綴る著者の力量。 わたしは「無愁天使」が好き。 きっと生まれた瞬間から、家族や自分を取り巻く人間関係のなかでひとつづつていねいにはめ込まれてきたパズル絵。 1ピース失ったとき、そっと置いておくかその欠片の代わりを探せば良かったのに、バラバラとすべて壊してしまった。 もう作り直すつもりもないけど、その絵の大切さを思い出そうとするだけで痛むのだ。 壮絶な母の死。以前のような純粋さやひたむきさを失った自分の深い傷は、新しく積み重ねる虚無という傷でどんどん隠してしまう。 果てしない現実逃避。幼さが持つ無垢という残酷。 途中で、そのしつこさに嫌気が差すんだけど最後があんまりアッサリすぎて。 ちょっとイラっとくる不完全さが好き。 「幸福な遊戯」はデビュー作らしい。他の2編もきっと初期のもので、近著に比べればかなりザックリと荒い印象です。 賛否両論かな。
by yucco_mini
| 2009-01-22 14:08
| books
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