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カテゴリ:books( 65 )
「 三月の招待状 」 / 角田光代 (著)  
a0020009_11511645.jpg三月に届いた招待状。それは大学時代の友人夫妻からの離婚パーティの案内。
そこで再会した学生時代の仲良しグループ男女5人。34歳。
懐かしみながら、何かを取り戻そうとしながら、
それでももう何も取り戻せないことに気付きながら。
「あの頃」に少しずつ別れを告げてゆく。
オトナになりきれないオトナたちの物語。
これって、リアルに今の30過ぎくらいの人達がよくウロウロしてる「場所」だと思う。
たまにわたしもウロつきかける。チクチク痛む。


大学時代の自分たちの残像をふと見ながら充留は考える。
“ まだ何ものでもないというのに、すでに何ものかであるような傲慢な錯覚を抱き、今手にしているものは砂の一粒も失うことなく歩いていけると信じている。
自分が笑うとき、世界もいっしょになって笑っていると疑わず、こっそり泣くとき、世界が自分だけを苦しめていると思っている。
なんと無知でなんと幸福な時間に、彼らはいるのだろう。” (本文より)

最後、宇多男の言葉を聞きたかった。彼の口からどんな言葉が出るのか知りたかった。
彼の言葉次第では、なにかが変化するかも知れないのに。
結局、何も、どこにも突き抜けない。
きっとそういう物語なのだろう。
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by yucco_mini | 2009-06-01 12:17 | books
「 風花 」 / 川上弘美 (著)  
a0020009_1128146.jpg結婚7年目33歳子供なし。発信者不明の電話で突然知らされる夫の浮気。
終始取り乱すことなく、一見淡々と、穏やかに、自分の置かれる立場と事の成り行きを少しずつ確かめる主人公。
その変化はあまりにもゆっくりすぎて見落としそうなんだけど。
寧ろ、突然すぎて気がつかないのか。
確実に女として強くなってゆく。

これ、いったいどうなの?と。大半の女性はストレス溜まります。2/3くらいまでは。
率直に言うと、サッサと別れろや!そんな男!と。
別れたがる男にハッキリとした理由もなく別れを拒む女。
自分が何故、彼と別れたくないのか。彼を好きな理由を探したりしてる。

「結婚」の特殊性とでもいうのでしょうか。
「恋愛」とは確実に違うものが彼女の行動をおかしなものにしてる感じもなきにしもあらず。

でもわたしの経験上、彼女の行動はおかしくない。
客観的に観て、もしくは時を経てみるとかなりトンチンカンなんだけど。
なるよな。なるなる。こうなりますよ。
彼を失いたくないわけでなく。彼を失った自分を受け入れられない。
別にのんびりしてるわけじゃなく、それなりの時間が必要なのだ。

最後は男が「別れたくない」と言う。
でも、その頃はすでに女は強くなっている。彼に抱く愛情は、以前のものとは確実に違う。

そんな男は、いらないの。
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by yucco_mini | 2009-05-20 12:05 | books
Robert Mapplethorpe
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16年前に滋賀県立近代美術館であったロバート·メイプルソープ展。
そこで買ったカタログ(作品集)を今でも時々眺める。

当時はロック女(笑)だったので、その写真展に行ったきっかけも彼の撮ったパティ·スミスや燃える星条旗の写真に惹かれたからであった。
もちろんそれらは彼の作品のなかでも特に有名なものである。

でも写真展に行ってわたしの興味は変わった。
彼の撮る花の写真がとても好きになった。
鮮やかというよりは生々しいオーキッドやカラー(ユリの一種)。
あえてモノクロで撮られた本当は色鮮やかな花たち。かすみ草なんかもある。
写真なのに絵画みたい。
花たちがもたらす色よりもその造形に意識が向くようになった。

花って、ほんとに素晴らしい仕事してるよね。
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by yucco_mini | 2009-02-13 11:40 | books
「幸福な遊戯」 / 角田光代 著
a0020009_1316099.jpg雲を掴むような人物が雲を掴むような生活を淡々と過ごす、雲を掴むような話。
「幸福な遊戯」他、「無愁天使」「銭湯」の3編収録。

表題作である「幸福な遊戯」は男2・女1の3人の同居生活。
だいたい想像のつくような設定でそれでもキリキリとしたせつなさを残すのは、それを切り取るときにスキャンダラスな部分はアッサリと捨てて地味な心象風景を粘り強く綴る著者の力量。

わたしは「無愁天使」が好き。
きっと生まれた瞬間から、家族や自分を取り巻く人間関係のなかでひとつづつていねいにはめ込まれてきたパズル絵。
1ピース失ったとき、そっと置いておくかその欠片の代わりを探せば良かったのに、バラバラとすべて壊してしまった。
もう作り直すつもりもないけど、その絵の大切さを思い出そうとするだけで痛むのだ。
壮絶な母の死。以前のような純粋さやひたむきさを失った自分の深い傷は、新しく積み重ねる虚無という傷でどんどん隠してしまう。
果てしない現実逃避。幼さが持つ無垢という残酷。
途中で、そのしつこさに嫌気が差すんだけど最後があんまりアッサリすぎて。
ちょっとイラっとくる不完全さが好き。

「幸福な遊戯」はデビュー作らしい。他の2編もきっと初期のもので、近著に比べればかなりザックリと荒い印象です。
賛否両論かな。
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by yucco_mini | 2009-01-22 14:08 | books
安野モヨコ 著 (英訳:リチャード.バーガー)/ 「オチビサン」(2008)
a0020009_22101585.jpg日曜日の朝日新聞に連載されている安野モヨコさんのマンガが単行本に。
ものすごく肩の力の抜けたお話のようで、じつは読めば読むほどしみじみと深い。
その世界観は哲学的ですらある。
ここで描かれる日常って、ありふれているようでいて、でも、そのあまりにもシンプルな平凡さがどこか夢の世界のように美しくて、きっと手のとどかない日常。
・・・という意味では非日常なのだろうか。
かわいらしいキャラクターたちと淡いタッチの背景がここちよくて何度読んでも飽きない!
英語版も併記されていてお勉強にもなるのです。

オチビサン特設ページ→http://www.annomoyoco.com/ochibisan/index.html
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by yucco_mini | 2008-09-17 22:48 | books
「手紙」 / 東野 圭吾 (著)  
a0020009_13301027.jpg両親を亡くし貧しい兄弟2人暮らし。弟の学費を手に入れたくて盗みに入った家で殺人を犯した兄。
弟を案じて刑務所から兄が送り続ける手紙をはさみながら弟の過酷な人生が描かれる。

小説や映画のいいところは、自分が経験できない景色や物語の中に身を投じて、そのなかでつかの間、あたらしく知る感覚や感情を手に入れることができることだ。

あー。やっぱりこうなるのか、と。
頭ではわかっていたけど残酷すぎる。
正直に生きても、慎重に生きても。すべてを片っ端から奪われる。
殺人犯の弟でいること。それは、社会の中でこんなにも異質なことなのか。
しかし、彼を異質なものとしてはじく社会の中の一人として、わたしたち読者はいる。
何かが解決されるわけではない。でも何かを考えなければならない。
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by yucco_mini | 2008-05-16 13:46 | books
「流星ワゴン」 / 重松 清 (著)  
a0020009_1235516.jpgリストラ、壊れた家庭。生きる気力を失っった38歳のサラリーマン。
「もう、死んだっていいや」と思う彼の前に現れるワゴン車は5年前に交通事故でなくなった親子が乗っていた。
そのワゴンに乗り込み向かうのは彼の過去の大切な場面。
妻の秘密、変わっていく息子、壊れていく家族。
知らなかった辛い事実が次々と目の前に繰り広げられる。
そして自分の実父との確執。

いちど歪んでしまった関係を修復するのは、他人よりも肉親の方が難しい。
情念は果てしなく交差する。事実はてこでも動かない。
過去を辿りながら、どうやってもやり直せないことに悔し涙しながら、死ぬつもりの彼の中で変わっていくもの。
もう既に死んでしまって生き返ることのできないワゴン車の親子が彼の心に作用する。
" やっとわかった。信じることや夢見ることは、未来を持っているひとだけの特権だった。信じていたものに裏切られたり、夢が破れたりすることすら、未来を断ち切られたひとから見ればそれは間違いなく幸福なのだった。 "


癖のない文章で読みやすい。子供がいる人はぜひ。親との関係がぎこちない方もぜひ。
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by yucco_mini | 2008-05-15 13:20 | books
「蛇にピアス」 / 金原ひとみ(著)  
a0020009_231183.jpg古本屋で100円で見つけたので読んでみた。芥川賞受賞作。
好きか嫌いかで言うと、正直、あまり好きではない。
理由は、ロマンチックじゃないから。
自分でこんなこと言うのもこっぱずかしいのだが、この作品を読んであらためて自分がロマンチストだと思った。
視線や態度や情景や背景がクールなのはとてもいいと思うし、嫌いじゃない。
だけど、もう少しロマンチックがあったら、村上龍や岡崎京子になったのに。と思う。
でと、同時にこの先も絶対にならないだろうなと思ってしまう。
この作品を読んだ17歳はどう思うのだろう?
と、「限りなく透明に近いブルー」を初めて読んだ17歳の自分を思い出しながら考える。
わたしはあの時、ショックだったし理解もできなかったけど、あの世界のことをどこかロマンチックだと思った記憶がある。
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by yucco_mini | 2008-01-21 23:26 | books
「 対岸の彼女 」 / 角田光代 (著)  
a0020009_2211774.jpg 三歳の娘がいる専業主婦の現在と、彼女が出会う女性起業家の過去を交差させながら結末へ導く、迷える女の物語。
(直木賞受賞作)

どう考えても、立場的にわたしが近いのは専業主婦のほう。
でもより鮮明な映像で迫るのは起業家女子の過去(高校時代)。
女子高生が放つ言葉って、なんてきれいなんだろう。
やわらかくとがっていて、気が付かないうちに深く深く刺さってる。
こういう話を読むと自分がまだ大人になりきれてないことを知る。


“ なんであたしたちはなんにも選ぶことができないんだろう。・・・・・
・・・・・なんのためにあたしたちは大人になるの?
大人になれば自分で何かを選べるようになるの?
大切だと思う人を失うことなく、行きたいと思う方向に、
まっすぐ足を踏み出せるの? ”

痛いの承知で告白します。このくだりで思いっきり泣いてしまった。
青い。じつに青い。恥ずかしいくらい青い。
・・・とにかく、わたしは、迷わず出会うことを選ぶ大人でいよう。
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by yucco_mini | 2007-12-21 22:41 | books
「 クワイエットルームにようこそ 」 / 松尾スズキ (著)  
a0020009_11545359.jpg離婚後に元旦那が自殺した28歳バツイチ女子。
恋人との痴話喧嘩のあと、薬のオーバードーズで担ぎ込まれた精神病院の閉鎖病棟での14日間。

痛たたたた・・・。
そうです。女ってこんなんです。その強さが。
その火事場の馬鹿力加減が。
忍び寄る不安への向き合い方が。
くだらないものへの固執と、捨て去るときの潔さが。


著者が男性ってのが信じられないくらいリアル。設定ありえないけどリアル。

物語が会話と主人公の心の喋りで構成されているからか、同調できる人は読後やたらとスッキリするでしょう。
著者が演劇人で脚本家っていうことにものすごく納得。
ことばや会話の内容はもちろん、その繋げ方の巧みさにいちいち反応して笑ってしまう。
言葉を操る者はこれくらいおもしろくないと何も生み出せないと悟っておられるみたいに。
ちなみに、とてもせつない物語です。

※10月に映画化。
映画「クワイエットルームにようこそ」http://www.quietroom-movie.com/(音出ます)

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by yucco_mini | 2007-09-04 11:57 | books