wandering landscape
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カテゴリ:books( 65 )
川上 弘美/天頂より少し下って
a0020009_12105451.jpg久しぶりに読んだ川上弘美さんの本は短編集。
わたしは普段から短編をあまりすすんで読まないのですが。
こういうさらっとした、すこしの切なさが残る感じ、いいなって思いました。

よくみると少し捻じ曲がった空間だよね、っていうくらいのさりげない奇妙さを漂わせる文体が心地よい。
だってほんとは多かれ少なかれみんな捻じ曲がってるんだよ。
隠してるだけで。見ないようにしてるだけで。

このひとの描く恋愛小説が好きだな。
あれ、これ恋愛かな?くらいの微妙な恋愛。
でもすべて愛にまつわるお話。
いろんなかたちの愛を描いたお話。
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by yucco_mini | 2012-01-16 12:21 | books
ふがいない僕は空を見た / 窪 美澄
a0020009_13273078.png読んだ本のすべての感想を書くのは難しいので、こころに引っかかった作品だけはと思っている。
読了後、直感的にこの作品の感想を書くのは面倒だしイヤだと思った。
でも、そういう作品をスルーするのがいちばん良くないとわたしは勝手に自分のなかで決めている。(知らんがな)


五つの、というか5人の視点で描かれた救われない日常。
訳あり主婦にナンパされ、コスプレで不倫セックスする高校生の齋藤くん。
の話が出だしです。

この一つ目の終わり方が納得いかなかったのでやめようかと思ったけど、それから先が肝だった。


もう終わってしまいたいような人生もやっぱり終わらない。
自分で選び取ったわけじゃない軌道のうえで、幼すぎて修復もできなければ、救われるための何かを求めることもできない。
傷つけたくて傷つけているわけでもなく、剥き出しの無防備な心が本能的に自分を駆り立てている。

理不尽なことがらというものには理不尽な言い訳がついてまわる。
黄金律なんて機能しない、価値観のちぐはぐな世界で、
我々はいったい何をわかりあえるというのだろう?

それでも愚かな行為を愚かだと、我々は断罪せねばならない。
尊い行為を尊いこととして、きちんと敬わなければならない。


齋藤くんのお母さんが「希望」です。
彼女のたくましさをきちんと感じることでこの物語は救われる。
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by yucco_mini | 2011-11-15 14:07 | books
ミーナの行進 / 小川洋子
a0020009_13211962.jpg1972年春~1973年春。
父を失った岡山の12歳の少女が、伯母の住む芦屋のお屋敷で過ごす一年間。
スタイリッシュな伯父さん、ドイツ人のおばあちゃん、控えめな伯母さん、お屋敷ではたらく人々、コビトカバのポチ子。
そして、本が大好きで身体の弱い1つ年下のミーナ。
30年以上前の、あたたかいお屋敷の人々に囲まれて過ごした日々の回想。
失われた時間を宝物のようにたいせつに持ち続けた主人公が、その宝石をひとつひとつ丁寧に取り出して眺める。
読者はそんな彼女のこころの動きにそっと寄り添うだけでいい。


 / 「君なら大丈夫。どこへでも、行きたい場所へ行ける」 /

/ ...あの日曜日の冒険を思い出す。そうするだけで、自分が、過去の時間に守られていると感じることができる。 /



たとえどんなにせつなくても、かなしみや淋しさをかかえていたとしても。
そのとき歩いた道程やじぶんが下した決断は必ず、喜びとおなじくらいの価値が付与され未来のじぶんの過去におさまったその瞬間からそっと自分自身を守るのだろう。


リセット、なんてできないんだから。
リロード、でいいんじゃない。
目の前がすこし、拓けてきた気がするでしょう・・・・?
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by yucco_mini | 2011-09-02 14:01 | books
優しいおとな / 桐野夏生
a0020009_1116279.jpg一昨年、読売新聞の土曜日の朝刊で連載されていた作品。
当時、読売新聞がサービスで入っていて楽しみに読んでいたのだけれど、サービス終了で読めなくなって続きが気になっていました。
これも近未来小説、なのかなぁ。
先日読んだ村上龍さんの小説と若干イメージが重なるのは主人公が少年であるからかもしれないけれど。

舞台は東京のアンダーグラウンド。底辺の暮らしをする少年たち。
感想を述べるにはストーリーが必要になってくるタイプの小説なので書くのが難しい。

とても、いい話だと思います。

愛情を注がれた子どもは必ず、ひとに愛情を注げるおとなになる。
愛を知っている子どもは、つよくてやさしいおとなになれる。
それは間違ってないと思うのです。

信じていいと思うのです。
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by yucco_mini | 2011-07-20 11:29 | books
歌うクジラ / 村上龍
a0020009_12153076.jpga0020009_12154152.jpg近未来を描いたサイエンスフィクション、というのでしょうか。
効率と快適さを求めた結果、完全なる管理体制下で行われる「棲み分け」で生まれた階層社会。
重要な情報を手にした最下層の少年が、その情報を届けるために最上層へ向かう物語。

読み終わって最初の感想は「ずいぶん遠回りしたね」です。
彼の道程が遠回りなわけではなくて、著者のメッセージがです。

正直、読み易いとは言い難い作品。
でもあらすじだけ知ればそれでいいという作品を書く作家ではない。

村上龍さん特有の表現は健在です。
気持ち悪いと思えばやめればいい。不快だと思うのなら読み進めなければいい。
読者は自由ですよ。

でも彼の作品には読者の想像力を試すしかけがある。
それについてゆけば、必ずどこかで力強い美しさを持つ言葉に出会う瞬間がある。
わたしは若干Mっ気があるので、そういうのが快感です。(←そんな情報いらんわ!)
そして何かに気づくよね。もしくは思い出して再確認する。
これが大切。



“誰も他人の想像を支配できない。想像は支配の道具ではなく、想像する主体を導く。想像する力がお前を導く。想像せよ、お前は導かれる。”

“取り戻せない時間と、永遠には共存し合えない他者という、支配も制御もできないものがこの世に少なくとも二つあることを、長い長い人生で繰り返し確認しているだけなのだって、わたしは気づいたの。”




永遠なんか誰も求めてないということ。快楽だけを求めるべきではないということ。
少年はどうしてこんなスピードで移動しつづけるのだろう。
でも彼は間違ってなかったでしょう?
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by yucco_mini | 2011-06-02 13:19 | books
わたしを離さないで / カズオ イシグロ
a0020009_12141449.jpg
「提供者」と呼ばれる人々。同じく「提供者」として育ってきたキャシーが「提供者」となって人生を終えようとする友人たちの世話をする。
そして思い起こす日々。
淡くやさしい追憶が残酷な運命を背景にしたものであると気づくのはずいぶん読み進んでから。
彼らの背景にあるらしい秘密は最初は小さな染みのようだったのに。

「提供者」が何を意味するのか。
そして「提供者」である彼らがそれでもなお切実に、誠実に求め続ける人生の「価値」と「意味」。

確かにSF作品であるはずなのに、「作り物」を認識するときのかすかな客観性が読者の中に顕れない。
緻密に豊かに、しかしながら抑揚された語りと追憶のもつ静謐さが、彼らの背景にある恐ろしい境遇に取り乱すことを許さない。
読み終わってしばらくはこの作品に対する言葉を失うだろう。
わたしは結構いまも失い気味です。
強く心を打たれました。

ずっと気になっていた本。やっと出会ったなという感じ。
絶賛上映中ですが、じつは映画化を知らずに図書館に予約していました。
その他のイシグロ作品もこれから読んでみたいです。
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by yucco_mini | 2011-04-15 12:45 | books
羊をめぐる冒険 / 村上春樹
a0020009_12455328.jpgわたしのはじめての村上作品、「羊をめぐる冒険」。
文庫が出始めた時、本屋で表紙のイラストが気に入って手に取った。
中3~高1の頃。
当時はこんな小説初めてだと思った。
すごくびっくりして夢中になった。
それ以降の村上作品は全部リアルタイムで自分で買って読むことになった。

a0020009_1246524.jpg今回は、「村上春樹全作品1979-1989②」で。
今読み直してみると、何にそんなに驚いたのだろうと思うんだけど・・・
(慣れって怖いね)。

いろんなものを失っていく物語。
名前は忘れた「誰とでも寝る女の子」、妻、仕事、相棒、耳の美しい恋人、大切な友達。僕の青春。
取り戻すためではなく、失うための冒険。

ひとは歳とともに、時間の経過とともにどんどん何かを得ていくのだと思っていた。
あたりまえのように。
でも違う。いつのまにか失っていくんだよ。

死は特別なものじゃなく生の延長にある。確実に同じフロアにある。
それに気づかされたのかもしれないな。
" 誰にでも失いたくないもののひとつやふたつはあるんだ。君にもね "
" 人間には欲望とプライドの中間点のようなものが必ずある。全ての物体に重心があるようにね。
・・・・・今に君にもわかるよ。そしてそれを失ってから、はじめてそんなものが存在していたことに気づくのさ "


もし村上作品に出会っていなかったら。
わたしは高校の選択授業で倫理なんか取らなかったかもしれない。
大学の哲学科を受験したりしなかったかもしれない。

と、ふと思います。



責任取れや・・・笑
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by yucco_mini | 2011-02-04 13:33 | books
告白 / 湊かなえ 著
a0020009_13554122.jpg愛娘を自分の生徒に殺された女性教師の復習。
その事件に関わった人々とその周りにいる人間たちのさまざまな角度からの「告白」が物語を構築している。
3時間くらいで読んでしまえる。娯楽性に優れた作品だと思う。

わたしには7歳の娘がいるので、5歳の女の子が殺されるシーンやその回想シーンなんかは、それはもう痛くて痛くて仕方なかった。
母親である教師の、その悲しみや怒りや憎しみや復習の執念深さはぜんぜん理解できる範囲だというのが正直な気持ち。
実行されるかどうかは別として。

ただ、その幼い子の命を奪った少年たちも子どもであることには変わりなく、彼らの浅はかさや弱さを、彼らを覆い尽くす悲しみやべつのかたちの幼稚さを、どこまで、どんなふうに処理して読み進めるかによってこの作品の受け取り方は変わるのだろう。

暗くて救いがない、でも面白い本でした。
昨年映画化されたけど主題歌はレディオヘッドらしいです。

とことん暗いなー。
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by yucco_mini | 2011-01-21 14:20 | books
ツリーハウス / 角田光代
a0020009_12282534.jpg西新宿の古い中華料理店「翡翠飯店」の三代記。
東京と旧満州を場面は行き来する。

なんだか大袈裟に描かれるべきテーマであるはずなのに、身構えていたわりには拍子抜けな印象。
衝撃的なエピソードが山ほどあるのに詳細は描かれない。
しかしそれは決して批判的な見解ではなく。
むしろ、エピソードよりも重きをおくべきは人間の感情の流れではないかという角田さんの意図かと勝手に想像。


現実は現実として。
過去は過去として。
未来は未来として。
 / ・・・今、家族を作るものは根っこではないのではないかと良嗣は眠りに沈みゆく頭で考え、その考えに自分でもはっとする。根っこではなかったらなんだ? 希望だ。 /       (本文より) 


ちょっと珍しいタイプの小説だと思う。
長いけど意外とすぐに読めるしちゃんと楽しめる。人物にとても味がある。
角田さんファンの評価が気になるところです。
むしろ角田さん嫌いな方が是非読んで感想を聞かせて欲しい。かもしれない。
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by yucco_mini | 2010-12-21 12:53 | books
なくしたものたちの国 / 角田光代 松尾たいこ
a0020009_1014449.jpg角田さん流のおとなのための童話。
5話収められてるが短編集じゃない。ひとりの女性の人生の夢のようでいてとても鮮明な瞬間を切り取った物語。

松尾たいこさんのイラストをみて角田さんがイメージして書かれたらしいが、角田さんがあとがきで触れているように、松尾さんの絵をみて最初に降りてきた数々のイメージ「寒くてあたたかくて、冷酷でやさしくて、ひりつくほど孤独で、眠たくなるほど満たされている」・・・そんな感覚が見事に再現されている物語だと思う。



わたしは2話目の「キスとミケ、それから海のこと」と最後の「なくしたものたちのこと」が好き。
喪失フェチなんですよ・・・(は?)


ちゃんと繋がってるのがすごい。
輪廻転生を思わせる壮大で果てしないテーマが、ひとりひとりのちいさな人生の中にちゃんと入っているということを、どこか懐かしい童話のように、魔法にかけられたように示してくれる。

読む者の持つ想像力がこの物語の魅力を左右するであることは確か。
この物語がつまらなかったら、人生きっと何かが足りないのでは?



図書館で借りて読んだんだけど、絵本のように持っておきたいなと思う一冊です。
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by yucco_mini | 2010-11-17 10:45 | books