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「 猫を抱いて象と泳ぐ 」 / 小川洋子 (著)  
a0020009_2255966.jpgあるトラウマから「大きくなること」を何よりも恐れる若き天才チェスプレイヤーの数奇な人生の軌跡。

盤下で身を潜めながら、頭上でチェスが置かれる音でその盤上を理解しゲームを進める奇妙なスタイル。
盤上の駒を動かすのは「リトル・アリョーヒン」と呼ばれるからくり人形である。
彼の棋譜を写しながら人形の手助けを担う少女との決して触れあうことのない愛。

すべてが小さく、謙虚に、もはや自分の存在を消しながら生きる彼のその慎ましやかな心情と誰もが心粋する美しいチェスの腕。
それらを表現する作者の文章が物語に沿うように簡潔できれい。

小川さんの作品を読むのは「博士の愛した数式」以来。
数学を知らなくてもあの作品が心に馴染んだように、チェスを知らなくてもしっくり馴染む。
でもねー、やっぱりチェスを知って読む方がきっと想像力が広がるスピードが違うと思う。
その深さも。

将棋にもよく言われるけど、自分の駒が進むべき道筋がはっきり現れるときって、深い海の底に潜ってどこからが光が差すような感覚らしい。(この物語の主人公はいつもその傍らに猫と象がいるのであるが)
あの感覚をもっと近くに、手の届く感じでその宇宙を頭の中に再現するには自分もそんな経験をしてみることだと読みながら何度も感じたのである。(無理だけどね)
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by yucco_mini | 2009-06-13 23:49 | books
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