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壮絶な苛めを日常的に受けている14歳の男女が秘密に育む不思議な絆とその儚さ。
その忌々しい日常を意識的に受け入れることで得る神聖なる存在価値。 苛めを通して、その根源や人の弱さや強さ、善悪までを問う哲学書のような小説。 この小説に書かれているようなことがリアルならばそれは本当に悲しむべきことだろう。 苛められている男子がはじめて苛める側の一人と対話するくだりはこの物語の山場である。 が、同時にわたしが最もイライラした場面だ。 できるかぎりの思考を重ねて懸命に生きながら蓄積してきた言葉を吐く主人公と、すべての感情や想像力を無視しながらニヒリスティックな哲学を持つ苛めっ子との会話。 どんなことをしても分かり合えることなんてないひととひとの絶望的で現実的なやりとり。 本来非日常的であるべきものが日常にすり替わる恐ろしい瞬間。 それとともにやってくる善悪の混沌。 光り輝くシーンが鮮やかに描かれる最後。 でも物語はなにも解決しない。 読者は苦しさを持ったまま何かを考えなくてはならないだろう。 すべてを救うのは想像力だ。わたしはいつもそう信じている。
by yucco_mini
| 2010-07-28 23:28
| books
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